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酸素ラジカル
「万病の素」とも言われる活性酸素ですが、酸素の活性は生命に不可欠です。とくに脂質とのかかわりをおさらいしてみます。
 
酸素の活性化  
 
普通、酸素分子は 三重項と呼ばれる状態で安定しています。それ以外 、つまり活性で不安定な状態の酸素を活性酸素:reactive oxygen species:ROSと呼びます。
 
 
活性酸素の種別  
ラジカル種  
スーパーオキシド:superoxide anion O2-
  ヒドロキシルラジカル:hydroxyl radical HO
  アルコキシルラジカル LO
  ペルオキシルラジカル:peroxyl radical HOO
  アルキルペルオキシル(過酸化脂質)ラジカル LOO
  一酸化窒素 NO
非ラジカル種  
  一重項酸素 1O2
  過酸化水素 H2O2
  ペルオキシナイトライト ONOO-
  脂質ヒドロペルオキシド LOOH
  次亜塩素酸 HOCl
  オゾン O3
表記:  不対電子   陰イオン  
 

 酸素の活性とは、電子を取得することです(4電子受容体)。閉殻になり安定化するまでの途中が活性酸素で、 うち電子数奇数の状態がラジカルです。詳細は こちら をご覧ください。

 三重項酸素→
スーパーオキシド→過酸化水素→ヒドロキシラジカル→水
 
 
呼吸と酸素ラジカル  

 人は一日に2500キロカロリー程度のエネルギーを費やし、このために450リットル前後の酸素を吸い込み、その1〜3%程度の活性酸素を生じます。主に細胞内の小器官、ミトコンドリアの呼吸鎖で生じるスーパーオキシドです。

呼吸鎖とは :  エネルギー供給分子ATPを細胞に提供する仕組みです。脱水素酵素が1電子ずつ還元をすすめるので、ラジカル発生をともないます。 [ 呼吸鎖:電子伝達系]

3O2+e- O2- スーパーオキシド生成
 
  ATP;Adenosine Tri-Phosphate;アデノシン三リン酸

抗酸化酵素

 体内では、マクロファージによる外来異物防御などでもスーパーオキシドが使われます。いわば両刃の剣ですが、分解酵素;SODの働きで非ラジカルの過酸化水素
H2O2に解消 し、さらに過酸化水素はCAT;カタラーゼやGSHPx;といった酵素 により分解、解消します。

SOD: Super Oxide Dismutase;スーパーオキシド分解酵素
CAT: Catalase;過酸化水素分解を触媒する酵素
GSH-Px: Glutathione Peroxidase
グルタチオン過酸化/還元酵素 群

こ れで活性酸素が消去されますが、例外的に過酸化水素がさらに還元を受けるとヒドロキシラジカル:HO を生じ、これが深刻な被害を与えることが最大の問題とされます
 
ヒドロキシラジカルHO  

 ヒドロキシラジカルは、発生すると即座に水素1個を奪い
H2O;水になって消滅します。 まったく単純なために超高速で相手を選ばず、糖でも蛋白でも近くの分子を破壊し、破壊された相手もラジカル化します。反応時間はナノ秒(1億分の1秒)単位で、止める方法が考えられません。
 細胞に対し、以下のような被害をもたらします。

・たんぱく質: 酵素などを破壊。
・遺伝子DNA破損、切断:
・生体膜脂質破壊、過酸化:

 DNA損傷は、突然変異、ガン細胞化など深刻な被害をもたらすことがあります。脂質の過酸化物は、さらに細胞損傷や組織傷害を招き、老化促進や動脈硬化、心臓病など生活習慣病の一因とされます。
 
脂質のラジカル反応  
  ラジカルは反応の相手もラジカル化します。これが次の分子を攻撃 するので、いわば将棋倒しのように連続します。

 図は、脂質LHに対する連鎖反応です。一個のラジカル、OHによる開始反応 で、多数の分子を連続破壊する連鎖反応が始まります。

  [ ペンタジエン]


開始反応 : ラジカルが脂肪酸から水素を奪い、水となって消滅します。脂肪酸は(L)ラジカル化します。
LH +OH → H2O + L

連鎖反応: 以下を反復します。

L+O2
LOO(脂質ラジカルから過酸化脂質ラジカル) 
LOO+LH → LOOH+L(次の分子から新しいラジカルを生成)
 
 
生体膜の連鎖破壊  

 
ラジカルの被害をもっとも受けやすいのは、脂肪酸分子が整列している生体膜です。なかでも不飽和脂肪酸のペンタジエン構造が弱点です。
 

ペンタジエンのラジカル反応: 二重結合にはさまれた活性メチレンが起点となり、容易に脂質ラジカル、bisアリルラジカルを生 じます。
 
   [ ペンタジエン]
抗酸化物質:ビタミンE/Cによる連鎖切断  
 ヒドロキシラジカルの開始反応超高速で止めようがありません。しかし、連鎖破壊を進める過酸化脂質ラジカルは捕捉できます。脂質を守る抗酸化物質としてビタミンE(α-TocopherolVEと略記)が代表的です。  
LOOVELOOH+VE  

 攻撃性の低いラジカル:VEを生じ、さらにもう1分子捕捉、計2分子を無力化 して連鎖反応を遮断します。
 水溶性のビタミンはビタミンを還元することで、 抗酸化力を強化します。ポリフェノールやフラボノイドもよく似た抗酸化の仕組みをそなえ 、スカベンジャー(掃除役)と総称します。
 くわえて上記の
GSH-Pxは、LOOも捕捉し連鎖反応を切断します。

 
 
 
脂質という抗酸化システム  
 

 こうしてみると、脂質は ラジカルに対し脆弱に見えます。なかでもペンタジエン構造は敏感で、それがすべての多価不飽和脂肪酸に共通 しています。何故こうなのか、不思議な話とも思えます。

 実は、生体にとってもっとも深刻な被害はDNA遺伝情報の損傷です。何故なら、DNAは生命の設計図で、 生命存続の最低条件だからです。
 ということは、ペンタジエンがラジカルを誘い、生体膜という外堀で受けとめ、脂質が犠牲になることで生命の核心部 、DNAを守る、という戦略なのでしょうか。生命とは、そのようにして生き長らえてきたものかもしれません。

 
 
 

自動酸化の原因

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  油脂は、時間がたつと変質することがあります。かっては、微生物による腐敗とされましたが、実際は酸化 であることが大半です。
 原因は大気中の酸素ですが、自然な状態では酸素(三重項酸素)による酸化は微量です。 また、多くの天然油脂は抗酸化成分を含み、酸化を抑制しています。
 自動酸化は、何らかの原因でラジカルが発生し、特に多価不飽和脂肪酸の場合、ペンタジエンから連鎖反応がはじまり、過酸化が進行することです。ペンタジエンのラジカル応答は、こちらをご覧ください。
[ ペンタジエン]
 いったん連鎖反応が始まると、次々と過酸化脂質ラジカルを生じ、拡大します。上記の説明の通りです。
 したがって、問題は、ラジカルの開始反応をおこすきっかけで、以下があげられます。

 ・加熱、高温
 ・不純物、金属あるいは酵素などの触媒作用
 ・直射日光、紫外線、蛍光灯などによる一重項酸素生成

  現在は、油脂製品の品質も向上しているので、一重項酸素による発生が多いようです。
 なお、油脂が含む抗酸化成分は、量的に限りがあります。製造後、長期間たつと抗酸化性が失われ、酸化しやすくなります。
  [ 一重項酸素]
一重項酸素;1O2 の酸化:

  紫外線や日光などで励起された酸素分子です。たとえば店頭や家庭で保存中にも発生します。ラジカルではありませんが反応性は高く、直接に過酸化脂質を生じます。[ 一重項酸素

  LH +1O2 →LOOH

  被害は過酸化脂質1分子だけですが、連鎖反応の起点となりかねません。対策は光や熱を避けることで 、こちらをご覧ください。
[ 油脂の保存方法]
 
 
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