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Q&A:油脂入門
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油脂の形から-2

前ページの続きです。水と油と生体膜。活性酸素と脂肪酸の関係など。

 

水と油


  水と油はまざりません。当たり前の話ですが、それが生体には重要な意味を持ちます。
 水に溶けないという性質、つまり疎水性とは水の分子的性質によるものです。水分子のクラスタが、炭化水素をはじき出すからです。
 [ 水素結合]
例: オレイン酸の疎水性ポテンシャル :疎水性 :親水性


 ただし、脂肪酸の末端の-COOH:カルボキシル基は親水性です。
トリグリセロール:TGのエステル結合もやや親水性です。 このため、水に油を落とすとカルボキシル基が水と接するように分子が整列して、薄い油膜が水面を覆うことになります。
 
 

 このように、親水性/疎水性がつくる分子の集合をミセル
micelleと呼びます。分子数は数百程度の小さなもので、分子 間はファンデルワールス力で引き合っています。
 ちなみに、水面の
油膜は虹のように光って見えます。これは、油膜の厚さが脂肪酸の分子長程度で、可視光の波長と近いために生じる光の干渉です。
 
 水と油の混在

  油膜は平面ミセルですが、水中の油は球形のミセルをつくります。多数のミセルがコロイド状態 をなすことを乳化、emulsionと呼びます。
 乳化には、油滴が水中に分散した”Oil in Water”、O/W型と油に水滴が分散したW/O型があります。
たとえば、洗濯は油性の汚れを乳化して取り除 くO/W型の応用です。フランスやイタリア料理では、バターや油の乳化が頻繁に使われます。
 

 ・牛乳 : O/W型;
 ・バター: W/O型;
 ・マヨネーズ; O/W型;

 化粧品のクリーム類も乳液ですが、用途によりW/O型、O/W型を使い分けているようです。さらに、最近は
”Oil in Water in Oil”、O/W/O といった技術も紹介されています。
 

構造をつくる脂質

 人体の70〜80%は水分です。このため、体内の脂質は、水面の油膜と同じように自ら凝集して膜や球のようなミセルを作 ります。これがさらに上位構造をつくり、生体膜などを作ります。
リポたんぱく質

   リポたんぱく質とは、水性の血液中でコレステロールなどの脂質を運ぶ構造です。油膜と同じようにグリセロールやリン脂質 、たんぱく質などが集まって、表面(外側)は親水性、内側は疎水性の球形を つくっています。

[ リポたんぱくの種別]

細胞膜をつくる脂質

 

 細胞を囲む細胞膜や、細胞内の小器官を包む膜などを”生体膜”と総称します。生体膜は、いわば油膜が2枚、逆向きに重なった形の二重膜になっています(脂質二重層)。その内部(2枚の膜の間)は疎水性で、表面(膜の外面)は親水性です。
 

 生体膜は化学的な結合ではなく分子の集合体です。
 このため柔軟で流動性が高く、さまざまな生理機能をになうことができます。構造上、膜の厚さは分子2個分となり5から10nm(ナノメーター)つまり100万分の5から10ミリメーター程度の薄さです。

  生体膜には主にリン脂質やたんぱく質、コレステロールなど を含みます。コレステロールは膜に堅さ、強さを与えます。たんぱく質は、たとえば細胞内外の物質が移動するトンネルだったりします。
 また、生体膜を作る脂質は柔らかい油と硬い脂が適度に混在し(つまり不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸)、体温の前後で適度の硬さになっています。
  リン脂質:親水性の燐酸を含むグリセロール。フォスファチジルコリンなどが多い。

脂質とラジカル

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 「活性酸素は万病の素」と言われますが、その被害をもっとも多く受けるのは脂質で、なかでも生体膜です。
 もともと酸素の活性は生命に不可欠で、細胞は酸素でエネルギーを作っています。が、そこから漏れ出す活性酸素、なかでもラジカルが問題です。
 ラジカルは反応の相手もラジカル化します。これが次の分子を攻撃して、将棋倒しのように連鎖攻撃が広がります。

RH +X → R + HX
*ラジカルXが脂肪酸RHを攻撃すると、Rがラジカル化
 
  [ 酸素ラジカル]
 不飽和脂肪酸は反応性が高く、なかでもペンタジエン構造はラジカルに敏感です。
 
上記のように、体内の脂質は集合しています。整列状態の生体膜は将棋倒し になりやすく、1個のラジカルで多数の脂肪酸分子が壊れて、生じる過酸化脂質は体に有害です。

  [ ペンタジエン]
 そんなわけで、油脂はラジカルが苦手です。ただし、そうであることが生命を守ると指摘する人もいます。脂質がラジカルの犠牲となることで、細胞の核にあるDNA遺伝子情報保護されるという見方です。詳細は [酸素ラジカル]をご覧ください。
   
  日焼けと油やけ

  日焼けは、日射による表皮細胞の損壊です。油やけは、化粧品などに含まれる不純物の仕業で、どちらも太陽光で活性化した酸素が原因です。 同時に皮膚をささえるコラーゲンも損壊をうけて、シワの一因とされます。
 この活性化酸素を一重項酸素( singlet oxygen)と呼びます。ラジカルではありませんが反応性は高く、表皮細胞の生体膜脂質を損傷します。

  LH +1O2 →LOOH

  油やけは、クリームなどに微量に含まれる金属成分が触媒となり、一重項酸素の発生を加速します。ただし、今日 の油脂製品の品質は格段に向上しています。用途さえ正しければ、油やけの心配はありません。
 なお、一重項酸素を抑える抗酸化物質としては色素β(ベータ)カロチンが代表的です。βカロチンはビタミンAの仲間で、励起状態の 電子を基底状態の
三重項に戻します(クエンティング効果)。

  1O2+1β-CAROTENE→O2+β-CAROTENE
 
  [ 一重項酸素]
 
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