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Q&A:
液相クラスター

  水は地上でもっともありふれた物質で、水なしに生命を考えることはできません。 ところが、 その性質は、在来の化学では捉えきれないものでした。
水の不思議

 水:H2Oの分子量は約18、沸点は100℃、氷点は0℃です が、同じ酸素属(16属)の水素化物中、例外的に高い値です(*H2O,H2S,H2Se,H2Te など。たとえば硫化水素:H2Sは分子量34、融点-82.9℃、沸点-59.6℃。他もすべて常温で気体です)。
 また、固体の氷は液体である水より軽い、というのも不思議です。固体では分子間が強く結合しているので、体積は液相より減少するはずですが、何故、氷は水に浮くのでしょうか

H2Oの電子軌道
 出発点は前出、酸素の電子構造です[酸素分子軌道]。水素2個と酸素が造る水の分子は四面体型で 、少し歪みがありますが、ほぼ 炭素のsp3混成軌道と共通です。

 4本の軌道のうち、共有電子対2本は水素-酸素の原子核の間にあります。非共有電子対(ローンペア)2本は、水素と反対側にあります。 つまり、分子中のマイナス電荷は後側に広がり、+電荷は前面のH原子核にあります。このように、分子中で電荷が分かれて分布することを分極と呼びます。
 分極した分子の間では、引力と反発が働きます(+と−は引き合い+同士−同士は反発)。そのために
 -H-O-H-O-H-
 という形の弱い結合力が働き、
これを水素結合と呼びます。水は水素結合で結ばれた柔らかな塊のような状態で、クラスターと呼ばれます。
水素結合クラスター
 水の特異性は、水素結合とクラスタによるものです。高い氷点や沸点は水素結合のエネルギーによ り、氷の体積増加はクラスタの構造変化によるものとされます。
  クラスターは固定構造ではなく、揺らぎも大きく、たとえば六角形や格子、鎖状などさまざまな形があるようです。形も大きさも常に変動するのでダイナミック・クラスターと呼ぶこともあります。
 
油脂の疎水性
水と炭化水素のメタンCH4を比較してみます。 どちらも4面体ですが、CH4の4軌道はいずれも共有電子対で 、電荷は均等に分布し、分極はありません(非極性)。
 このため水素結合もなく、炭化水素を水中においてもクラスターから 除外されます。これが、水と油は混じらないという疎水性の理由です。

 ただし、油脂を構成する脂肪酸の一端は-COOH基です。この部分だけは分極して水素結合をつくる、つまり親水性であることが、生体内での脂質の挙動、特に生体膜に深く関係しています。

生命と水素結合

 ちなみに、水素結合はさまざまなたんぱく質の形成やDNA二重螺旋構造にもかかわっています。エネルギー代謝をになう呼吸鎖のプロトン輸送も水素結合によるものとされ ます。つまり、水の存在は生命誕生の前提です。


参考:「分子クラスターから始まる新たな液体のサイエンス」

資源環境技術総合研究所、脇坂昭弘博士 


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